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第1部 戦闘機型MMS「飛鳥」の航跡 第9話 「嵐兎」 グワワアーン!! 廃墟ステージで大爆発が起きる。 砂地で砲撃を行っていたスーザンがびくりと振り向く。 スーザン「なっ・・・なんだ今のは?」 スーザンの砲撃から身を隠していたミシェルとヴァリアも驚いて廃墟ステージを見る。 ヴァリア「クソッタレ!一体どうなってんだ!」 戦乙女型MMSの「オードリ」がミシェルに近づく。 オードリ「ミシェル、チームの半分はあの動けなくなった戦艦型神姫に撃破されてしまいましたよ」 ミーヤ「こりゃダメだよ」 戦車型のヴァリアが腕を組んで必死に考える。 ヴァリア「うーんうーん・・・どうしよう?」 そのとき、1機の黒い天使型神姫と飛鳥型の神姫がヴァリアたちの隠れている岩陰に飛び込んできた。 アオイ「調子はどうだい?」 エーベル「うは、酷いなこりゃ、そこらじゅう神姫の残骸だらけだ」 ミシェル「あんたらは護衛機の相手をしていたんじゃ?」 アオイ「数機、ぶち落として加勢に来たぜ」 エーベル「今、残っているチームの残存神姫は何機だ?」 ヴァリアが手を上げる。 チーム名「城東火力特化MMSギルド」 □戦車型MMS「ヴァリア」 Sクラス オーナー名「松本 弘」 ♂ 25歳 職業 ベアリング工場員 □ウシ型MMS「キャナ」 Aクラス オーナー名「木村 雄一」 ♂ 25歳 職業 システムエンジニア □ケンタウルス型MMS「コルコット」 Aクラス オーナー名「三浦 晴香」 ♀ 17歳 職業 高校生 □ヤマネコ型MMS「ミーヤ」 Cクラス オーナー名「河野 恵」 ♀ 17歳 職業 高校生 ヴァリア「こっちは4体しか残っていない、武装も投棄しちまってろくな武装がない。 ミシェルもお手上げのポーズをする。 チーム名 「定期便撃沈チーム」 □ヘルハウンド型MMS 「バトラ」 Bクラス オーナー名「合田 和仁」♂ 15歳 職業 高校生 □戦乙女型MMS 「オードリ」 Sクラス 二つ名 「聖白騎士」 オーナー名「斉藤 創」♂ 15歳 職業 高校生 □サンタ型MMS 「エリザ」 Bクラス オーナー名「橋本 真由」♀ 17歳 職業 高校生 □マニューバトライク型MMS 「ミシェル」 Sクラス 二つ名 「パワーアーム」 オーナー名「内野 千春」♀ 21歳 職業 大学生 □天使コマンド型MMS 「ミオン」 Bクラス オーナー名「秋山 紀子」♀ 16歳 職業 高校生 □フェレット型MMS 「スズカ」 Bクラス オーナー名「秋山 浩太」♂ 19歳 職業 専門学校生 □ウサギ型MMS 「アティス」 Sクラス 二つ名 「シュペルラビット」 オーナー名「野中 一平」♂ 20歳 職業 大学生 □蝶型MMS 「パンナ」 Bクラス オーナー名「田中 健介」♂ 19歳 職業 高校生 □剣士型MMS 「ルナ」 Aクラス オーナー名「吉田 重行」♂ 28歳 職業 電気整備師 □ハイスピードトライク型 「アキミス」 Bクラス オーナー名「狭山 健太」♂ 19歳 職業 大学生 ミシェル「こっちも似たようなものですわ、半分以上の神姫は生き残ってますけど、戦意を喪失して、実質戦えるのは数体ってところかしら?」 チーム名「1111111」 □黒天使型MMS「エーベル」 Sクラス オーナー名「斉藤 由梨」 ♀ 22歳 職業 商社OL □戦闘機型MMS 「アオイ」 Aクラス オーナー名「立花 一樹」♂ 24歳 職業 事務機営業マン アオイ「たかが、一隻の死にぞこないの戦艦型神姫にキリキリマイとはな」 アキミス「結局、生き残ってるのは、臆病な腰抜け神姫と要領のいいベテラン神姫だけってところだ!!」 コルコット「なんやと!!」 ミーヤ「うるさいな」 アティス「喧嘩するな!!まずはあの戦艦型神姫をどうするか考えないと・・・」 エーベル「誰か指揮を取ってくれ!Sクラスのベテランがいいな」 ヴァリア「俺はいやだよ」 オードリ「私もいやですよ」 ミシェル「・・・・私が取ろうか?」 アティス「頼む」 エーベル「決まりだな」 アオイ「ベテランのAクラス以上の神姫だけで、一斉攻撃だ」 エーベル「うん?」 アオイが砂地に簡単な絵を描く アオイ「いいか、ここが俺たちがこそこそ、隠れている岩だ、この岩の20メートル先に戦艦型神姫が構えている」 ミシェル「戦艦型神姫は被弾していて動けない。だが、奴の砲座とレーダーもろもろはばっちり生きている」 アティス「動けなくなっただけで、戦闘能力は下がってへんな」 オードリ「・・・・接近して攻撃が一番、有効ですが、あの強烈な主砲と対空砲とミサイルをなんとかしないと・・・」 ヴァリア「せやけど、敵は優秀なレーダーとマスターの指揮管制で撃ってくる。レーダーをなんとかしなと・・・どうにもならないぞ」 アオイ「奴のレーダーを30秒だけ妨害できる手があるんだけど?」 エーベル「?なんだ?ECMか?」 ルナ「そんな高級な電子装備持っている神姫おるかいな」 アオイ「古い100年も前の手だが・・・これだ」 アオイは岩の影にあるゴミ袋に煙草のアルミホイルの包装を指差す。 エーベル「アルミホイル?ああ・・・そういうことか」 エーベルはにやりと笑う。 アティスも気が付く。 アティス「クレイジー!!正気じゃないわー」 オードリ「アルミホイル?なんに使うのですか?」 アオイ「こうつかうんだよ!!」 アオイはばっと岩陰から踊り出ると、煙草のアルミホイルの包装を掴んで、スーザンに向かって飛んだ。 スーザン「!!!敵神姫接近!!」 西野「ええい、しつこい連中だ!!まだ攻撃してくるか!!」 岩陰から数十体の武装神姫がどっと飛び出してくる。 ミシェル「突撃!!突っ込むんだ!!」 アティス「ええい、ままよ!!」 オードリ「やああああああああ!!」 西野「撃て!!叩き潰せ!!スーザン!!」 スーザン「了解!!」 スーザンはレーダー照準でアオイたちに合わせるが・・・ アオイはリアパーツのプロペラにアルミホイルの包装を投げつけた。 高速回転するプロペラによってアルミホイルの包装がコマ斬れになって、空に舞う。 ビーーーーーーー!!! スーザンの射撃レーダーが無数に飛び散ったアルミホイルの包装に反応し、真っ白に堕ちる。 スーザン「うわああ!!!な、なんだこりゃあ!!!レーダーロスト!!目標をロックできない!!」 西野「しまった!!チャフだ!!アルミ箔を散布してレーダーを撹乱しやがったな!!」 バンっと筐体を叩く西野。 ラジオにアルミホイルをまくと聞こえなくなる原理をご存知だろうか? 電波は電場(空間に電気の力がおよんでいる状態)と磁場が変動しながら空間を伝わっていく波。金属は電場で揺り動かされやすい状態の電子を多数含んでいて,金属にあたった電波の電場変動はこの電子を揺さぶることに消費される。電波はラジオのアンテナまで「電波」として届かなくなる。 一般に「チャフ」と呼ばれるシステムは、電波は金属によって反射されてしまう原理であり。 電波誘導装置のジャミングに使われるのもアルミ箔を細かく刻んだもの。 アオイは煙草の内装のアルミホイルを利用して即席のチャフ、ウインドウを作ったのだ。 遠距離からレーダーを使って射撃を行うスーザンは、アルミ箔の妨害によって正確な位置と砲撃がまったくできなくなっていた。 西野「ええい!!ソナーだ!!音響探知!!それで割り出して攻撃し・・・」 ミシェルが蝶型神姫のパンナを肩を叩く。 ミシェル「パンナ!!歌って!!!」 パンナをすうーーと息を深く吸うとマイクの出力を大音量に上げて歌った。 パンナ「私の歌を聞けェ♪」 パンナの歌声は、スーザンのソナー探知を狂わせる。 スーザン「!???!?!?!」 西野「どうしたスーザン!!」 スーザン「う・・・歌が・・・聞こえる・・・」 アオイとエーベルが低空飛行で急接近する。 それに続くオードリとミシェル、アティス、アキミス、ルナ 後方ではヴァリアが拳銃を片手に支援射撃を加える。 ヴァリア「撃て!!支援するんだ!!」 コルコット「了解ッー」 ミーヤ「撃破された神姫の武装を使うとは考えましたね」 キャナ「ごちゃごちゃ言わずに撃つ!!」 ヴァリアたちは周りで撃破された神姫の残骸から使えそうな武装を拝借してバカスカ撃ちまくる。 スーザン「ダメだァ!!!レーダー、センサー共にジャミングされて使えねえ!!!」 西野はダンと筐体を叩く。 西野「ならば、光学目測射撃だ、レーザー照準で攻撃しろ!!三角法射撃用意!!あの岩とあの松の木、それから大阪城の天守閣を目標にして三角法にて側距、敵機の位置を割り出して砲撃しろ!」 スーザン「クソッタレ!!アナログかよ・・・」 キューーインンイン・・・シャカシャカ・・・ 演算処理を0.5秒で済ませるスーザン。 スーザンは目を蒼く光らせて、じっと攻撃してくる神姫たちを見つめ、砲撃の準備をする。 ときたま、近くにヴァリアたちが放った砲弾が着弾し爆風と破片が降ってくるが気にしない。 西野「弾着観測は俺がする!!戦闘砲撃用意右80度交互撃ち方、初限入力2335砲撃開始、方向測定はじめ」 スーザン「右ヨシ左ヨシ、敵機距離23160・・・」 西野がマイクを掴んで叫ぶ 西野「撃ち方はじめッ!!!!!!」 ズドンズドンズドンズドンズドンズドンッズドンズッドオン!! To be continued・・・・・・・・ 前に戻る>・第8話 「爆兎」 次に進む>・第10話 「射兎」 トップページに戻る
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花は咲き乱れて ※注意!18禁です! 登場人物 パンジーのマスター 友人に勧められ、神姫を初めて購入した男 うっかりさん パンジー 花型MMSタイプジルダリアの神姫 大人しい性格 書いた人:優柔不断な人(仮) ちらっ…ちらっ… 「どうしたのです、マスター?」 昨日ウチに来たばかりのパンジーが俺に言った 「いや…なんでもない…」 友達に勧められて初めて買った武装神姫 パッケ絵に惹かれて中身を良く見ずに買ってしまったのだが、まさか中身があんなにえっちなカッコだったとは… 「心拍数及び呼吸数が異常に上昇してるようですが、どこかお体の具合でも悪いのですか? 「いや、大丈夫だ…」 武装させればマシになるのだろうが、武装させる為には直視しなければならない マスター設定をするまでは耐えられたのだが、動き出したらもう恥ずかしくて恥ずかしくて… 「もしかして、私に何か到らぬ点でも?」 「そんなことはないよ」 「でも私が起動してから、ちっとも私の方を見て話して下さらないのですね…」 う…俺が悪いのに…罪悪感が… 「…クスン、申し訳ありません。私が到らないばかりにマスターに不愉快な思いをさせてしまって…」 「そんな事ないぞ!キミがとっても魅力的すぎるから、俺の気持ちが昂ぶるだけだ!昂ぶりすぎるから怖いだけだ!」 ようやく彼女を見ながら、思いをぶつける 「…ホントですか?」 「ああ、本当だ。キミは俺になんか勿体ないくらい眩しすぎるのさ」 「そういうことでしたら相談していただければ良かったのに。私、良い対処法を知っております」 「何?ホントか?」 「はい。古くから伝わる気持ちの昂ぶりを押さえる方法です」 俺の前に来る彼女、そしてちょこんと座り、足を上げ顔を真っ赤にしながら言った 「私の足を持ってゆっくりと『開いたり、閉じたり』してください…」 彼女の言うとおりにしてみる俺 「開いたり…閉じたり…開いたり…閉じたり…」 彼女の透き通るような白い肌、それが微妙に赤みを帯びている… その肌を隠すのはわずかばかりの白い布… 「なんか余計に昂ぶってくるような…」 「ヘンですね…昔から伝えられている方法なのに…?」 彼女のカラダを弄ぶように開いたり閉じたりする俺… …やば…理性が…ぷち… 「パンジー!」 俺はとうとう欲求に負け、彼女の胸へと指を伸ばした 「あっ…」 弱々しく抵抗する彼女。しかし神姫と人間の力の差は歴然だ むにゅ… 「柔らかい…」 「マスター…ダメです…」 彼女の抗議を無視し、胸をいじり続ける くいっ ブラを上にずらす。彼女の胸が丸見えになる 勿論その先端のピンクの突起まで 「あっ…恥ずかしい…」 彼女のささやかな抵抗が、俺の淫らな欲望を増大させる 「キミが悪いんだ…」 「え…?」 俺の言葉に目を丸くする彼女。体が硬直し、抵抗も収まる そんな彼女の体に顔を近づけ ぺろっ お腹から胸、顔まで舐める 「はうっ…私が…いけないんですか…」 「そうだ、キミがいけないんだ…」 もう一度舐める 胸の先端を刺激する 「はうっ…私の、どこがいけないんですか…」 ぺろっ 答えずに舐め続ける 「私が…悪いんですか…申し訳…ありません…」 ぺろっ 不意にしょっぱい味がして驚く俺 ふと見ると彼女は… 「申し訳ありません…マスター…私が…到らないばかりに…」 その小さな体を震わせて、泣いていた …俺は何をやっている? 今俺はなにをしている? 彼女の何が悪いんだ? 悪いのは俺だ 自らの欲望に負けた俺だ 「…マスター、泣いておられるのですか?」 俺は泣いていた 自分の愚かさに 自分の勝手さに 彼女を傷つけた事に… 「…ごめん」 胸から手を離し、箪笥へと向かう 「…あの」 引き出しを開け、ハンカチを取り出す 「ごめん、最初からこうすれば良かったんだ」 彼女にハンカチを掛ける 「…あ」 ハンカチで体を隠す彼女 「ごめん、キミは悪くない。悪いのは俺だ。恥ずかしがりながらも、キミの肌をみたかった俺の…」 「マスター…」 「俺はマスター失格だ。キミを守らなきゃいけないのに、キミを傷つけた。キミを汚そうとした。自分の性欲を満足させるためだけに!」 「そんなことないです…」 「…え?」 「マスターにそんな感情を起こさせた私が悪いんです…」 そういって立ち上がる彼女 「だから…」 顔を真っ赤にし 「私で鎮めてください…」 ハンカチを下に落とし、全てをさらけ出して 「私を…汚してください…」 彼女が言った 「…わかった」 彼女を優しく持ち、テーブルの上へと乗せ、仰向けに寝そべらせる そして、彼女に残った最後の砦…パンティを脱がす 「…あ」 彼女の秘部からはキラキラと光る物が… 「濡れて…いる…」 「恥ずかしい…」 「もっと濡らしてあげるよ」 そう言って秘部に舌を這わせる 「はうぅ…」 熱い吐息を漏らす彼女 そんな彼女の秘部を執拗に攻める俺 だんだん彼女の息づかいが荒くなってくる 「あっあっ…はぅ…あん…あうう…あっ…ああっ!…もう…ダメッ!」 そんな彼女の秘部に最後の一撃を与える 「ああ~~~~~っ!」 背中をピンと反らせ、達する彼女 「ふぅ、ふぅ、ふぅ、はぁ、はぁ…はぁ…」 そんな彼女の頭を、優しく撫でる 「…申し訳ありません…マスターを鎮めなければ…いけないのに…私だけ…」 「…じゃあ、休憩したらこっちも…」 「あ…大丈夫です…」 彼女の返事を聞き、立ち上がりスボンをおろす 「…あ…これがマスターの…おしべ…すごい…」 この表現を聞いて、ああ、やっぱりこの子は花型なんだなと思ってしまった 膝を付き、テーブルの上にいる彼女に男根を近づける 「それじゃ、頼むよ」 「…はい」 そういって男根に手を伸ばす彼女 「…うっ」 触れた途端に快楽が… 「あっ…大丈夫ですか?」 「大丈夫、気持ちよかっただけだから。だから続けて」 「はい…」 そう言って男根を撫で始める彼女 「うう…きもちいい…もうちょっと…強く…早くして…」 しゅっ…しゅっ… 彼女の擦る力が強くなり、速度も上がる しゅっしゅっしゅっしゅっ 「ああっ…先端も舐めて…」 ぺろっ…ぺろっ… 舌による刺激も加わる 先走りの液体と、彼女の唾液とで男根はすっかりビショ濡れになった ぬちゅっぬちゅっ… 濡れた卑猥な音が響く もっと刺激が欲しい… 「ちょっとストップ」 「…はい」 彼女を止める俺 「もう一回寝そべって」 いわれるままに寝そべる彼女 その上に男根を乗せる 「足で締め付けて」 「あ…恥ずかしい…」 そういいつつ足を絡め、締め付けてくれる彼女 「じゃあ、動くから。体をしっかりと固定してね」 テーブルに手を置き、動きに備える彼女 それを確認し、ゆっくりと腰を降り始める ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ… 足で締められた男根は、彼女の秘部とお腹へと擦りつけられる 「おっ…おおっ…すごいくもちいい…」 「んっ…はんっ…私も…ですっ…あん…」 腰を振るスピードを上げる俺 「おっ…おおっ!…もう…そろそろ…」 「はうっ…私もっ!…また…あううっ!…」 「はぁっ!…くっ…くぅっ!でるっ!でるぅっ!」 びゅくっ! 「はうっ!…はあああああっ!」 ビクン! 同時に達し、嬌声を上げる彼女の体へと精液をぶちまける俺 びゅくっ!びゅくっ!びゅくっ! 「うううっ…ううっ…はううっ…」 「ああん、マスター…スゴかったです…」 彼女の体は、俺の放った精液で全身ズブ濡れになった… 「そうしてあなたが生まれたのよ、菜種」 パンジーは目の前にいる種型MMSタイプジュビジー…菜種に向かって話しかける 「ふーん。パパとママって、出会ったときからラブラブだったんだ」 「おいおいパンジー、嘘を教えるなよ」 「えー、嘘なの?」 「一部だけよ」 「どこが嘘なの?」 「それはね───」 終わる あとがき エロ妄想スレに投下したネタを大幅加筆修正してみました ジルダリアの足って、めしべなんだそうで そこにかけたら… とここまで書いて、武装させてなかった事に気付く俺うっかりさん
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前へ 神姫とは。 ある世界においては、全稼働型の美少女アクションフィギュアのことである。 神姫とは。 またある世界においては超高性能AIを搭載した、主人に従う心と感情を持つフィギュアロボットのことである。 神姫とは。 古今東西あらゆる属性を取りそろえ、抜群の容姿と戦闘力を兼ね備える完璧超人(?)である。 神姫とは。 主人の好機に槍となり、なにより生活に潤いを与えてくれる存在である。 そして鷹峰家の神姫とは…… 『ハーヤーテー!!』 別に東京の朝空に響き渡ってはいないが、ハヤテは少女の声を聞き即座に自分のベッドから飛び起きた。 鷹峰ハヤテは十五歳。職業は高校生……予定。 予定というのは、今は中学校卒業後の高校への準備期間であり、まだ高校生ではないからである。 「……どうしたの、ナギ」 眠たげな眼をこすりながら、ナギの声のするほうを向く。 すると小さな二つの液晶画面に向かっていた少女が、不機嫌そうな顔でこっちを向いた。 『バトルハウスで100連勝できない!!』 彼は苦笑いをしながら、あぁ、と思った。 「朝からゲームですか」 『何度やっても60くらいで止まってしまうのだ。 ハヤテ、もうマルチバトルでもいいから助けてくれ』 「……そうだね、面白そう」 彼はそう言いながら部屋の扉に手をかけた。 「じゃあ、着替えて顔を洗ってくるよ。 そしたら僕も入ってあげる」 神姫とはいえ、少女のいる部屋で着替えるのは抵抗があったのである。 『……わかった、早く済ませろよ』 心の中で「はい、お嬢様」と言いつつ、ハヤテは廊下で着替えを済ませ、洗面台で顔を洗った。 「ただいま」 樫の木でできた扉を、極普通に開ける。 『遅い!「ハヤテ」なら全力疾走で来るところだぞ!』 「いや、階段もあるしそれはちょっと」 ハヤテは3DSを起動しながら言う。 「……それで、どんな作戦で行こうか」 『雨パでいいだろう』 「え? 僕晴れパなんだけど……」 『えー? そうなのか? じゃあ私に合わせろよ』 「えぇ? でも…… うーん……」 『あー、もういい、私はこれで行くぞ!』 「え、え? じゃあ僕もこれで……」 バトルの明暗を分ける2人のパーティの相談しないまま受付を済ませる2人。 だがそのパーティの中身は…… 「あれ、ナギ普通のパーティで行くの?」 『そういうお前も普通のじゃないか』 「それは、ナギに合わせようかと……」 『私もお前に…… おっと、始まってしまったな。 む、相手は初戦から強いのを繰り出してきたぞ……』 「大丈夫、たたみがえしがあるよ……ほらっ」 『おおっ!』 彼女を防御技で守って見せると、少女は感心の声を上げた。 彼女こそがハヤテの神姫であるナギ。ハヤテのごとく!のヒロインである三千院ナギをモデルとしたれっきとした武装神姫の一人である。 「主を守るのは、執事の務め、だよね」 『うむ、これで安心して積めたぞ!』 「よし、じゃあ攻撃だ!」 『うむ! ……当たった! 凄い! やったぞハヤテ!』 協力により、見事強力な相手を倒した二人はお互いに賞賛しあった。 『やっぱり、ゲームは二人でやると楽しいな』 「寝起きでマルチバトルするとは思わなかったけどね、ところで」 『ん?』 「このハヤテのごとく!のノベライズ版一巻プロローグ風のオープニングの流れはいつまで続くの?」 『そうだな、そろそろやめるか』 というわけで、普通の流れに戻ります。 第1話 「ナギのごとく!」 本日4月6日。 あれからもう十日が経とうとしていた。 もちろんあれとは、ナギが鷹峰家に来たあの日である。 「……はぁ、もう明日は学校かぁ……」 『学校?』 「言ってなかったっけ。 明日は高校の入学式なんだ。 だから、明日から学校」 『なんだ、お前ニートじゃなかったのか』 「……違うよ。 っていうか、生徒手帳見せたよね?」 休暇中ニートのような生活をしていたのは確かであるが。 ナギが鷹峰家に来たことも相まって、二人でゲーム三昧な毎日を送っていたのである。 「そうだ、ナギは僕が学校行ってる間どうするの? ……ナギも学校来る?」 『誰がそんなもの行くか。 家でゲームでもしているさ』 (そう来ると思ってた) 原作でも不登校気味で一日中家で漫画とゲームをしておりスーパーインドアライフを全力で満喫しているようなヒロインである。 (連れてけなんて言われたらどうしようかと思ってたけど、余計な心配だった) 「じゃあ、ナギは家で待機ね」 『……ハヤテもサボったらどうだ。 ゲームの続きをしようじゃないか』 「僕は初日から学校をサボれるほど、ナギみたいに神経が図太くないからね」 『む!あれは別にサボったわけではない! ただちょっとその……たどり着けなかったと言うか……なんて言うか……』 「でも登校中に海に行こうとしたり勝手にはぐれて時間を潰そうとしたり……」 ※ハヤテのごとく!4巻参照。 アニメではそのシーンは削られてました。 『うるさい!とにかく私は学校には行かんからな! 一人で一人用のゲームでも漁っているから安心して学校に行ってくるがいい!』 「あはは、はいはい。 さて……じゃあ」 時計を見ると、もう11時50分。 あと10分もすれば4月7日。入学式の日だ。 ちなみに学校が始まるのは8時40分である。 (通学の時間とか計算して……7時くらいに起きればいいかな。 やっぱり最低でも7時間は寝たいから、そろそろ…… でも、やっぱり初日から遅刻は嫌だし、もう少し早く?) 『ハヤテ?』 「とりあえず、アラームをセット……」 ハヤテはスマホを操作し、アラーム機能の画面を開く。 時間を6時にセットし、音量を最大に、ちゃんと設定されたのを確認し、携帯を閉じた。 「それと、明日持っていくものは…… 上履きと、筆記用具に、財布に、携帯電話(スマホ)に…… あと、ゲーム機も……」 復唱しながらバッグに詰めてゆく。 (こんなものかな) 確認を終え、ハヤテは歯を磨きに行くために立ち上がる。 「じゃあ、僕は歯を磨いて寝るよ。 ナギもクレイドルに戻ったら?」 『あぁ、そうだな。 ハヤテが寝るんじゃ仕方ない、私も寝るさ。 ……でも、電気を切るのは戻ってきてからだぞ、いいな』 「わかってるよ」 ナギは一人で眠れない、という部分も再現されているようで、 こういった細かい再現もファンであるハヤテとしては嬉しいところである。 「ただいま」 『おお、戻ってきたか』 そう言ってナギはクレイドルに座り込む。 『それじゃあ、もう寝るぞ』 「そうだね、それじゃあおやすみ、ナギ」 『うむ、おやすみ』 ハヤテはナギがスリープ状態になったのを確認し、そのままベッドに転がりこむ。 (学校か…… ……確かに二人で一日中ゲームしてたいって気持ちはナギと同じなんだけどな) ハヤテはそう思いながら、眠りについた。 次へ
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第3部 「竜の嘶き」 「ドラゴン-3」 2041年10月27日 A飛行場の片隅で天使型のエーベルたちが自分の武装パーツの整備を行なっている。 連日の戦闘で被弾した箇所や老朽化したパーツなどを交換したり修理するなどやることは多い。 エーベルが鼻歌を歌いながら自分の武装パーツを弄る。 エーベル「フンフンフウーーン♪」 シャル「ごきげんだな、どんな具合だ?」 エーベル「エンジンの油漏れがひどくてね、オイルクーラーの方はどうにかなったが、パッキンがなくて苦労しました」 シャル「で、どうしたんだ?」 エーベル「この間撃墜したテンペスタの廃材からかっぱらったんですよ」 リイン「シャルッ!!!」 リインが血相を変えてシャルに詰め寄る。 シャル「私たちのドラッケン戦闘爆撃隊は地上攻撃に専念させるようにマスターに言ったそうですね!!」 シャル「だったらどうした?」 リインが怒鳴る。 リイン「シャルはテンペスタとやるのが怖いんですか!!」 シャル「テンペスタと空戦してもムダだからな」 リイン「戦乙女のアイネスの連中に任せておいていいんですか!!俺の仲間はみんなテンペスタに叩き落されちまった!シャルの仲間もそうでしょう!!なぜですか!?あんたはソレで悔しくないんですか!?」 シャルががっとリインの胸倉を掴む シャル「リイン!!てめえェそれ以上知ったような口を叩いてみろ!!もう二度とキサマとは飛べないようにしてやるぞ!」 リイン「グッ!」 シャルはぱっとリインの胸倉を離すと去っていく。 リイン「へっ・・・チキン野郎め!」 横で聞いていたエーベルが舌打ちをする。 エーベル「おい、リイン!!」 リイン「なんだよ・・・」 エーベル「つまらんことを言うな、ちょっとやりやったぐらいのエース気取りで一人前の口をきくんじゃない」 リイン「俺はそんなつもりじゃ・・・」 エーベルはため息をつく。 エーベル「シャルだって何度もズタボロになりつつも帰ってきている」 リイン「何度も負け戦で臆病風に吹かれたって感じか?」 エーベル「・・・いいか、よく聞けよ小娘、テンペスタと戦うことだけがここの集団バトルロンドの戦闘じゃねえ、地上攻撃や支援攻撃も立派な戦闘だ」 リイン「・・・・」 エーベル「重装甲、重武装の戦闘爆撃機型のドラッケンで軽量高機動のテンペスタに空戦で勝つのは難しい。テンペスタを落としたいお前のガッツは分かるだがな、シャルは爆装した重いドラッケンでテンペスタのウヨウヨ待ち構えている所に味方の支援用の低空攻撃をかけてきているんだ、そしてそれをさらに続けようと言うんだ。上空を他の神姫に、俺やアイネスの連中を信じて任せてな」 リイン「そ、それは・・・」 エーベル「シャルがチキン野郎かどうか、よく考えろよ、その足りない頭でな・・・」 エーベルはそういうと再び自分の武装の整備を無言でもくもくと続ける。 2041年10月28日 天王寺公園神姫センター 第3フィールド森林ステージ 小川にB飛行場に補給を行なう旧式の輸送艦型MMSが数隻、小川を下る。 チーム名「マテハン」 □コルベット艦型MMS「アルバトロス」 Sクラス オーナー名「小野 幸助」♂ 31歳 職業 システムエンジニア □輸送艦型MMS「モントレ」 Cクラス □輸送艦型MMS「フェイサー」Cクラス □輸送艦型MMS「ラヴァトリ」Cクラス □砲台型MMS 「ブレア」Bクラス □砲台型MMS 「ザフィー」Bクラス □火器型MMS 「ノレマ」Bクラス オーナー名「橘田 勝」♂ 40歳 職業 印刷会社総務 シャル「敵チームの輸送船団だ!撃沈するぞ!」 ライラ「生意気にコルベット艦型なんて護衛に引き連れてやがる!」 チーム名「ドラケン戦闘爆撃隊」 □戦闘爆撃機型MMS「シャル」 Sクラス □戦闘爆撃機型MMS「ライラ」 Aクラス □戦闘爆撃機型MMS「セシル」 Aクラス オーナー名「伊藤 和正」♂ 27歳 職業 工場設備関係メーカー営業員 □戦闘爆撃機型MMS「リイン」 Aクラス オーナー名「伊上 直人」♂ 26歳 職業 総合卸商社営業員 シャルたちのドラッケン戦闘爆撃隊がロケット弾を積んで上空から急降下で攻撃を仕掛ける。 アルバトロス「レーダーに感有り、敵機確認!機種はドラッケン戦闘爆撃機4機を認識」 小野「対空戦闘方位3-2-0距離30に備え、このままの戦闘隊形を崩すな、後続の輸送艦隊に発光信号、対空戦闘用意!」 アルバトロスがチカチカと発光信号を発する。 輸送艦型神姫の甲板に上がっている砲台型神姫たちが砲台モードに展開し、迎撃の準備を始める。 橘田「対空戦闘用意っーー各砲台各個射撃はじめ!敵を近寄らせるな!」 ドドドドドドドン!!ズンズズウズン!! 輸送艦型神姫の甲板から砲台型神姫による激しい対空攻撃が行なわれる。 ライラ「おはッ、輸送艦風情がなかなかやるな!」 リイン「シャル!リインだ、殿をやらせてください!」 シャル「・・・」 シャルはリインの顔をじっと見る。 シャル「殿は砲火が集中するぞ!気をつけろ!」 リイン「わかっています!」 シャルはぐんと機首を下げると水面スレスレを飛ぶ、それに続くリイン。 アルバトロス「ドラッケン4機!輸送船団を狙っています!」 小野「いかん!アルバトロス、全速前進!なんとしても守れ」 コルベット艦型MMSがシャルたちの前に躍り出る。 アルバトロス「やらせるかァ!!」 アルバトロスは主砲の2mm単装砲をシャルたちに向かって撃ちまくる。 ドンドンドンドンドンドンドンドンッ!! ガキンバキンゴキン!!シャルの装甲板に命中し穴だらけになるが、シャルはひるまない。 シャル「こなくそ!これでも喰らえ!!」 シャルはグレネードキャノンを展開すると、アルバトロス目掛けて連続で撃ち込む。 ドゴオオオンドッゴオオンンッ!! アルバトロス「うぐおおおおお!!?」 アルバトロスの砲塔に命中し爆発が起きる。 ズンズンズウズズウウウウウン!! シャル「リイン!!ついて来ているか!?」 リイン「はい!!」 シャル「俺はさっきのコルベットの攻撃で満足に動けない!輸送船団をライラたちと一緒に血祭りにあげろ!」 リイン「了解!」 アルバトロス「ごほごほ、主砲塔のモーターが潰れました砲撃不能・・・消火装置作動、火災鎮火、SAM発射します」 アルバトロスは垂直ミサイルを連続で発射する。 ライラ「警告!ミサイルミサイル!」 ミサイルが山なりの弾道を描いてリインたちに襲いかかる。 リインはすかさずチャフフレアを放出する。 リイン「FUCK!」 バッババッバババン!! チャフフレアの欺瞞によってミサイルはあらぬ方向に命中する。 ズンズウウウン アルバトロス「ミサイル全弾はずれ!小口径砲による射撃を行ないます」 アルバトロスは格納式の機関銃座を展開し、リインたちに集中砲火を浴びせる。 ドドドドドドドド!! ライラ「てめえはしつこいんだよ!!」 ライラが機関砲をアルバトロスに向けて撃ちまくる。 ドガドガドガドガ!! アルバトロス「うわあああ!!ま、マスタァーーー!!」 体中を大口径の機関砲で撃ち抜かれ、弾薬庫に引火したアルバトロスは派手な水蒸気爆発を起こして轟沈する。 □コルベット艦型MMS「アルバトロス」 Sクラス 撃破 モントレ「ご、護衛のコルベットが!」 ライラ「邪魔なコルベットは沈めたぜ!」 リイン「よし!今だ!!ロケットランチャー全弾撃ちつくせ!」 バシュバシュバシュシュシュ!! ブレア「うわああ!」 ザフィー「に、逃げろ!」 ノレマ「NOOOO!」 橘田「か、回避全速!!」 モントレ「ま、間に合いませ・・・」 フェイサー「うわあああああああ!!」 ズドドドドオオンッ!!! 物凄い爆音と水柱を立てて、一気に3隻の輸送艦型神姫が木っ端微塵になってバラバラに吹き飛ばされ轟沈する。 □輸送艦型MMS「モントレ」 Cクラス 撃破 □輸送艦型MMS「フェイサー」Cクラス 撃破 □輸送艦型MMS「ラヴァトリ」Cクラス 撃破 □砲台型MMS 「ブレア」Bクラス 撃破 □砲台型MMS 「ザフィー」Bクラス 撃破 □火器型MMS 「ノレマ」Bクラス 撃破 ライラ「イーーーヤッハ!!」 セシル「まるでイワシ缶だぜェ」 リイン「やりましたね!シャル」 シャル「今日は久々に大量だな」 シャルたちは、勝ち誇ったように上空を旋回し、エンジン音を轟かせる。 リインがシャルのすぐそばを通る。 リイン「シャル、昨日はその・・・すまなかった・・・臆病者なんていってしまって」 シャル「本当に臆病ならリアルバトルの武装神姫なんかやらねーよ、ケガしないバーチャルのロンドやってるぜ」 リイン「それもそうだな・・・」 ライラ「そーいえば今日はいつものテンペスタの連中いねえな」 セシル「あいつらはマスターが女子高校生だからな、今週はテストの前だから大人しいんだよ」 ライラ「なるほど」 セシル「ということは、テストが終わった日が危険ということか・・・」 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>「ドラゴン-4」 前に戻る>「ドラゴン-2」 トップページに戻る
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前を見た少女と、煌めく神の姫達(その二) 第四節:真心 楽しかった夕餉も終わり、私達は電車で次の場所へと向かった。そこは、 冬のお台場である。バレンタインには相当早い為か、夜と言ってもさほど カップルの数は多くない。私達の邪魔をされないという意味では、上等! 「とりあえず、観覧車にでも乗るか?街の夜景を見るのも、いいだろう」 「はいっ!あたし達も、こんな所に来るのは初めてですから緊張します」 「……多分それは、マイスターも同じなんだよ?だって頬が、紅いから」 「マイスターも来た事無かったの?大丈夫かしら……でも付いていくわ」 「折角のデートですから、デートコースはマイスターにお任せですの♪」 民放キー局が遠くないこの場所にあるのは、湾岸地区の夜景を楽しむには 最適と、午前中に買い求めた雑誌の記事で書かれていた大観覧車である。 なるほど……目の前にしてみれば、小さな私の躯にはかなり大きい。更に 躯の小さな神姫達ともなれば、天を突く程の巨大な風車なのかもしれん。 「……ふむ、どうだ。これに乗って、今から暫く皆に話をしたいのだが」 「う、うん。良いわよ……アタシには何がどうとか、まだ分からないし」 「きっと東京の夜景が、煌めく無数の宝石みたいに映るはずですの~♪」 「楽しみ、かな。さぁ、マイスター……行こう?邪魔のされない領域に」 「どんな時間が過ごせるのか、楽しみですね……ええと、大人一枚です」 訝しむ受付嬢に“大人一枚”と復唱して、私達はゴンドラへと乗り込む。 デートスポットに一人で来る、こんな外見の私を不審に思うのも当然か。 だが無闇にそれを怒るよりも、今は大切な“妹”達との時間を尊重する! 「ほう……これが、東京の夜景か。どうだ皆、自分達が住まう街の灯は」 「うん、綺麗!凄く綺麗よ……世界がこんなに輝いてるのに、アタシっ」 「それ以上は言いっこ無し。エルナちゃんも、この光景を楽しむんだよ」 「そうですよ。ほらアレ見て下さい!東京タワーですよ、東京タワー!」 「夜空の星はちょっと見辛くても、夜の灯火はまた綺麗ですの~……♪」 その自制が奏功し、皆は輝く夜の街並みに釘付けとなっている。無論私も 東京の美しさを再認識して、荒み気味の“心”が満たされるのを感じる。 陳腐とは思うが、こういう些細な事さえも……今なら大事に思えたのだ。 そして最上部へ差し掛かった辺りで、私は話を切り出してみる事とした。 「……さてと、まずは今日の修理で何をしたか。それを告げねばならん」 「修理、ですか?あたし達は全身のモーターと、電装機器が不調で……」 「とても立ってられなくて、セーフティが起動したんだよ。大丈夫かな」 「有無。それらの交換・修理は無論だが、CSCへの負荷が大きかった」 正直、今告げて良いかは悩んでいた。だが、この後にもっと重大な告白を せねばならん以上は、この程度なら『大事の前の小事』と言えるだろう。 私は、少し不安げに見つめる四人を膝に乗せて“治療”の内容を告げる。 「そこで損耗が軽微な“プロト・クリスタル”の情報を利用したそうだ」 「利用?それって、データの補強に別のCSCを用いたって事ですの?」 「そうだ。現行型CSCの論理ダメージは、そうして修復したらしいぞ」 そして物理的な傷は、Dr.CTaが持つマイクロマシン用の技術で回復した。 その辺をどうやって直したのかは、私には分からぬが……恐らく彼女なら 後顧の憂いがない程度に“傷”を修復してくれた、そう私は信じている。 「そしてエルナ。お前の“CSC”も、同様の方法で修復したと聞いた」 「えッ!?ちょっと、CSCって……アタシにそんなのが入ってたの?」 「有無。当然、現行型CSCではない。もう一つの“プロトタイプ”だ」 「じゃあ……これでエルナちゃんは、正真正銘“神姫”になれたのかな」 「更に言えば、本当の意味であたし達の“妹”にもなりましたね……♪」 それはロッテのCSCが正式に認可される程度に、CSCと酷似した珠。 神姫の試作品が源流ならば、それも必然だったのだろうが……エルナに、 “心”が宿るのを拒む者が居なかったのは、これで確かとなったのだッ! 「やっぱりエルナちゃんは、愛されてましたの。そしてこれからもっ♪」 「う、うん……アタシにも“心”……“真心”が、宿ったのかしら?」 「無論だろう。四人とも、各々の“真心”を得て蘇ったのだ。大丈夫!」 恐らく同じ修理法は何度も使えぬだろう。それだけの“離れ業”なのだ。 だが、Dr.CTaがそうして皆を蘇らせた事は……私達にとって特別な意味を 持つだろう。“魂”が神姫にあるならば、その繋がりがより強固な物へと 進化したという事が、言えるのだからな。私にとっても、誇らしい事だ! 「そっか……じゃあ、アタシもお姉ちゃん達の大切な“妹”になれる?」 「勿論ですの!エルナちゃんは、これからもずっと大切な存在ですの♪」 「ボクらも……アルマお姉ちゃんも、ロッテお姉ちゃんも……なのかな」 「それは、マイスターの“告白”を聞けば分かると思いますよ……うん」 「そうだな。では今こそ、言おうではないか……っと!?ちょっと待て」 そして“様態”の説明が一区切り付いた所で、皆の視線は私へと集まる。 そう、いよいよ告げねばならぬ時が来た……と思ったのだが、見ると外の 風景は、輝く夜景から元居たビルの谷間へと戻ってきていた。そう、今は 観覧車の中……一周してしまえば、降りなければならない。迂闊だった。 「う、うぅむ……時間が来てしまった。場所を変えて、そこで話そうか」 「それがいいですの。ちょっといい雰囲気だったのに、残念ですの……」 「ぅぅ……じゃあ何処に往きますか?あたしは何処でも大丈夫ですけど」 「やっぱり、ロマンチックな場所がいいと思うんだよ。大事な事だから」 「アタシは……胸が熱くなる感じがしてたから、助かるわ。少し怖い位」 ──────私も怖いけど、だけど……とても胸が暖かいよ。 第五節:約束 場所の選定ミスによって、告げるタイミングを逃した私達。だが、ここで 諦めるつもりはない。という訳で、観覧車を後にした私達は海浜公園へと やってきた。潮騒の音が、優しく夜闇を揺らす……そんな静かな場所だ。 だが、どうも仕切直しとなった空気は重苦しい。何から話せばいい……? 「……ところでさ、マイスター。なんでアタシの名は“エルナ”なの?」 「む。いきなりだな、エルナや……そうか、名前の由来が知りたいのか」 「そうみたいなんだよ。ボクは、お店の名前からもらったんだけど……」 「あたしもですね。“ALChemist”から一文字もらってます……あっ!」 そんな雰囲気を撃ち払ったのは、エルナだった。そう、“妹”の名前には しっかりと意味がある。店名から、ドイツ人女性の名を導き出したのだ。 “Alma”と“Lotte”、そして“Clara”に“Erna”。不思議か?だがッ! 「そう。エルナの“r”と“n”は、“m”を分解して捻り出した物だ」 「つまり“錬金術師”の名を冠する大切な神姫、って事になりますの♪」 「アタシも、同じ存在なのね……じゃあ残りの字は、どうするのかしら」 私の考えを聞いて、エルナは嬉しそうに……しかし、少しだけ不安そうに 私を見つめる。彼女の純粋な問いに対する答えは、私の胸にある。それは 少し照れくさい言葉となるが、“告白”の切っ掛けとしては上等だろう。 「まず、“ist”は“Christiane”……クリスティアーネから取った物」 「……なら残りの“h”はどうしますの?それが、気になりますの……」 「そうだな。“Herz”……ドイツ語で、“心”や心臓を意味する単語だ」 『え……?』 そうだ。皆の中心には“心”が……私の“心”がある。今から告げるのは それを確固たる物とする為の、誓いの儀式だ。言葉は、選ばねばならん。 「エルナ。新しく私達の“妹”となる、気高き紫の姫君よ」 「な、何?……マイスター、何でもいいわ。話して……」 「お前を解き放った以上は、終生まで側にいてもらうぞ?」 「これ……首飾り?お姉ちゃん達と、お揃いの……?」 私は、答えを待たずポケットから一つのペンダントを取り出して、彼女に 付けてやった。そう、私の……歩姉さんのペンダントを元に作り上げた、 五人お揃いのペンダント。これがエルナに与える、“約束の翼”である。 何れは此処に神姫バトルの階級章を嵌め込む。そうして完成する逸品だ! 「……クララや、静かなる翠の姫君よ」 「何、かな?マイスター……」 「智恵と、秘められた優しさ。これからも大事にしてほしい」 「……大事に?……それは……」 クララは答えを紡ぎ出そうと俯き何かを思うが、私は更に皆へと告げる。 四人もいるのだ、一々区切るよりは一遍に告げてしまった方が楽だろう? 「アルマよ。陽の如き、明るき紅の姫君」 「は、はいっ!?」 「お前の暖かさと“姉”としての矜持は、皆を支えていくだろうな」 「ぁ……支えるだけじゃ、ダメなんです……その……」 アルマは反論しようとしたが、そこで一端言葉を句切った。そのまま私は 残った一人へと、そして皆へと想いを告げる事とする。血が沸騰しそうな 感覚を堪えて、私は言葉を絞り出す。最早、隠す事は出来ないのだから。 「……そしてロッテ、澄み切った蒼の姫君よ」 「はいですの♪」 「お前は、純粋な“心”で私の……皆の力となった」 「……そう言ってもらえると、光栄ですのっ」 「そして、皆……今だけは、私の『本当の言葉』を伝えたい」 『はい……』 それは、遠い昔に棄ててきた私の“弱さ”。しかし、完全に捨て去る上で 彼女らに、それを伝えないといけなかった……ううん、伝えないとダメ。 私の弱い所も強い所も、全部……何もかも皆に見せないといけないから。 「コホン……皆、とても大切。『好き』とか『愛してる』だけじゃない」 「ま、マイスター……?」 「もっともっと純粋な『大切にしたい』って想いが、私にはあるんだよ」 「……マイスター、その口調……」 「でも、それを一言にしちゃうなら……やっぱりこうなっちゃうかな?」 「ずっと前、お店を立ち上げるより前の……弱かった頃の言葉ですの」 「だから、私は言うよ。アルマ、ロッテ。クララ、エルナ……四人とも」 「う、うん……何?」 そう……これは私が弱さを棄てる前に、歩お姉ちゃんと話していた言葉。 今この時は、この言葉で語りたい……だって、止められない想いだもの。 それはたった一言。陳腐でも、飾らなくてもいい。偽れない大切な言葉。 「“大好き”だよ……皆」 『あ……!?』 その言葉と共に、私は皆の小さな……とても小さな唇と、優しく触れる。 堅い殻の躯だけど、それでも“心”はとても甘く切なくて……暖かいの。 だけど、それを認識したから……私はやっぱり、素直になれないのだな。 「……は、はは。今更生き様は換えられぬが、雰囲気もあるしな?」 「マイスター……」 「だから今だけは、あの言葉で想いを……な、何だクララや?」 そう言い、照れながらも調子を戻した私の掌に乗るのは、クララだった。 彼女は、心なしか潤んだ様に映る“琥珀色の瞳”で、私を見つめている。 「異形を抱えて消えかかったボクを救ってくれたのは、貴女なんだよ」 「……う、うむ。そうだったな」 「その時から、ボクの“心”にはずっと貴女がいたもん」 「クララ……?」 「だから、ボクも言うよ……掛け替えのない大切な人に“大好き”って」 「んむ……ん、ぷは。クララ……むぐぅ!?」 そして私の唇に押しつけ返される、クララの小さな唇。そっと抱きしめる 私の手中で、彼女は身を退き……アルマへと、身を譲った。彼女もまた、 私の唇を奪い……そして、泣きそうな儚い笑顔を浮かべつつ言ったのだ。 「ん、ん……あ、アルマっ?」 「支えるだけじゃダメです。あたしも、皆を愛して……愛されたいから」 「アルマ、お前……」 「だって貴女の“心”が、あたしを暖かくしてくれたから……だから」 「……有り難うな、本当に」 「いいんです、一生お返しするんですから。“大好き”な人に……ね?」 涙が零れる。だが、皆の思いが籠もった“琥珀色の瞳”を見逃すまいと、 私はずっと皆を抱きしめながら、その想いに応えていくのだ。次に、私の 前に現れたのはエルナ。彼女は、頬を真っ赤に染めながら上目で告げた。 「……正直ね?まだ、何もかも信じ切れたわけじゃないの」 「エルナ……それは、そうだろうな」 「だけど、貴女達なら……お姉ちゃん達と貴女なら、信じてみたいわ」 「……そうか」 「“命”と“心”を掛けて救ってくれた皆を、“大好き”って言いたい」 「──────ッ!」 「それが、アタシの“真心”。素直じゃないけど、赦してね?……んっ」 「ん、む……んぅぅ!?」 エルナの告白と共に、私の唇は三度……そして四度塞がれる。最後に私へ “純潔”を捧げたのは……他ならぬロッテだった。彼女は、とても明るく 私に微笑みかけて、そして紅潮する顔をそっと抱きしめてきたのだ……。 「人と神姫では、歩いていける時間が違いますの。永遠は無理です」 「ロ、ッテ……?」 「だけど、全ての時間を“大好き”な人と共に使いたいですの♪」 「あ……ロッテ、皆……ッ!!」 「だって、本当に“大好き”なんですから……貴女の事が」 「……ぐす、みんなぁ……ッ」 「だから万一人間の恋人さんが出来たって、問題ないですの~♪」 「ッ……ばかぁ、っ!」 ロッテの“告白”を受けて、四人が私を見上げる。堪らなく、愛おしい。 私は優しく抱きしめた。小さな殻の躯に詰まっているのは“空”ではなく 純粋で穢れのない“心”。その眩しさで、また私の視界は潤んでしまう。 私は、ずっと……愛しい“妹”達を抱きしめて、歓喜の涙を流していた。 彼女らも、その想いは同じだろう……それがまた嬉しくて、微笑むのだ。 「ぐす……私の“弱さ”を見せたのはお前達だけだ、そして……だなっ」 「今後“弱さ”を見せる事は多分無いだろう……って言いたいのかな?」 「それでも大丈夫ですよ。今の……マイスターの“心”は、皆の中に!」 「ちゃんと刻まれたわ……大丈夫、忘れない。貴女の全てと共に歩むの」 「だから、もう一回だけ。皆で“告白”しますの♪いっせーのーせっ!」 『マイスター……“大好き”ですッ!!!!』 ──────私も、“大好き”だよ……。 ──武装神姫……小さな戦乙女。人と機械の垣根を越えて、そんな君達に 出会えた喜びは、ずっと朽ち果てない宝物だよ……小さな私の“妹”達。 皆で、ずっと一緒に歩んでいこうね。それが、皆の“願い”だから──。 妄想神姫:本編 / Fin. メインメニューへ戻る
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「もうっ!いつまで隠れてんのよ!」 アタシの対戦相手のハウリン、たしか凛っていったっけ?正直、あのコには同情する。起動直後でバトル?ありえない。アタシなら絶対イヤ。 そもそもこのバトルの原因の、アイツが絡んでたあの娘。そりゃあ、原因はあっちかもしれないけど、よそ見して歩いてたアイツも悪いんだし。向こうも謝ってるんだからそれでいいのに、なんでまたこんな面倒な事にするのかしら? いっつもそうなのよ、アイツは!態度ばっかりでかくてイヤになっちゃう。 ……いや、悪いトコばっかりってワケでもないのよ?たまにだけど優しいコトもあるし……あ、今は関係ないわよね。 とにかく、そんなワケであのコには同情してるワケ。でも、それはそれ。バトルになった以上は恨みっこなしという事で、さっさと勝たせてもらうつもりだったんだけど。 初心者ってワリにはなかなかやるのよね、あのコ。攻撃はもらっちゃうし、さっきので決めるつもりだったのに逃げられちゃうし。 いい加減探すのにも飽きてきた時、ようやくあのコの姿を見つけた。 巨大な砲身、蓬莱を手に待ち構えていたみたい。まともに撃ったってどうせ当たらないのに、まだ懲りないみたいね。エネルギーを使いきっちゃうけど、次の一撃で、レインディアバスターで止めよ! 「蓬莱ッ!」 相手の砲撃。そんなの何度も当たるモンじゃない。軽く避けて終わり―― 「きゃっ!」 不意に背中に走る衝撃。たいしたことないけど何?撃たれた?今のは…… 「プチマスィーンズ……!やってくれるじゃない」 小型の半自動支援メカ、プチマスィーンズ。銃器を取り付けられた四機のビットが、いつの間にかアタシの周囲を取り囲んでいる。でもこんなの、モノの数じゃないわ!所詮はムダなあがき…… 「わっ!だからムダだって言ってんでしょ……わっ!きゃっ!」 あ~、うっとおしい!ムダだって言ってんのに、しつこく撃ち続けてくる。一発一発はたいしたコトないけど、耐久力に自信がないアタシとしてはこれ以上撃たれるのはかなりマズイ。 回避の為に一度大きく迂回。するとハウリンが背を向けてどこかへ走りだした。また逃げるつもり?冗談じゃないわ、これ以上の面倒はゴメンよ!早く帰って、今日買った服を着たいんだから! ビットの銃撃をくぐり抜けてハウリンを追い掛ける。どうせスピードなら、圧倒的にアタシのが上。逃げたってムダよ! 建物の隙間を縫って走るハウリンを追い掛け、ちょうど四方をビルに囲まれた空間に飛び込んだその時、アタシはハウリンの姿を見失ってしまった。そんなはずない、確かにこっちに逃げて来たし、すぐ近くにいるはずよ。一旦足を止めて周りを見渡す。と、辺りの柱に取り付けられた妙なモノに気が付いた。どこかで見覚えのあるその『何か』。そしてそれが『何か』を察知すると同時に、レインディアを急発進させる。直後に響く爆音と衝撃、ヤバい。 アタシは逃げ場を求めてレインディアを急加速させる。四方を囲まれてる以上、上に逃げるしかない。爆発に巻き込まれるのもマズイけど、このままじゃ生き埋めになっちゃう。 「くぅっ!」 急加速、急旋回、急上昇。さすがにキツイ。体の芯まで響く派手な爆音、もし気付くのが遅かったらと思うとゾっとする。 今のはヤバかった。取り付けられていた『何か』、蓬莱のマガジンだ。炸裂弾が満載のマガジンを爆弾の代わりにするなんて、こすっからい手使ってくれるわね。初心者でここまでやれたのはたいしたモノだけど、もう頭にきた。ここを脱出したら、すぐに終わりにしてあげる。 崩れていくビルの合間を抜け出ると、目の前には空が広がっていて。バーチャル空間ではあるけど、雲一つない青空が広がっていて。だけどその直後に、アタシの視界は塞がれた。雲一つない空に現れた影。 「はあああああああっ!!」 体に走る衝撃と、砕け散る機体。翼を失ったアタシは、真っ逆さまに落ちていくしかなかった。 目の前にあるのは、雲一つない空、そしてあのハウリン、凛だった。 「ふぅ、これで全部セットしました」 『よし。もう少し経ったら姿を見せるぞ』 「ほ、本当に誘いに乗ってくれますかね?罠だと気付かれたら、打つ手がありませんよ?」 隼人の言う通りの場所に蓬莱の残弾、即席の爆弾を仕掛け終えた私は、何度目かの同じ質問をしていました。だってなんというか、あまりにもこの作戦は…… 『単純でいいんだよ。あのツガル、あんまり気の長いヤツじゃないみたいだからな。あの性格じゃあ、もうこの戦いにも飽きてる頃だ。格下相手だし、多少無理をしてでも決着をつけにくるハズだよ』 「ハズ……?」 『はず』 隼人の作戦はこうです。まず、いくつかの建物に爆弾を仕掛けておく。そして相手の前に姿を見せ、指定の場所まで誘導。タイミングを見計らってそれを起爆。四方で同時に爆発が起これば、必然的に退路は上に限られる。それを私が迎撃。相手がどんなに素早くとも、どこに来るのかわかっていれば命中させられる、という事です。 しかし、この作戦は全て予測に基づいたものに過ぎません。全て仮定で語られている以上、決して成功率の高い作戦ではありません。ですが―― 『俺はお前を、俺の相棒を信じる。だからお前も、俺を信じろ。お前の相棒を。な?』 「隼人……はい、わかりました!」 私は信じました。隼人の作戦を、隼人の言葉を。だってそう、私達はパートナー、相棒なんですから。 そして彼女は、アルさんは見事にこちらの思惑に乗ってくれました。そうなればあとは私の役目。放ったのは『獣牙爆熱拳』。捉えたのは私の持つ、最強の必殺技。その一撃は彼女を機体もろともに打ち砕き、強烈に地表へと叩き付けました。 「がはっ……」 彼女の体は固いアスファルトに放射状の亀裂を刻み付けると、そのまま力を失い横たわりました。もとより機動性重視で、防御や耐久力は低いツガルタイプ。もう立ち上がることは出来ないようです。そして―― 『K.O!Winner,Howling,RIN!』 コンピュータが試合終了のコールを鳴らします。そしてそのコールは同時に、私達、私と隼人の初勝利を告げるものでもありました。 「勝っ……た?私が……?本当に……」 『ぃぃぃいよっしゃあああああああ!!勝ったーーーーーーー!!!』 聴覚センサーが割れる程の歓声をあげる隼人。びっくりしました。ただでさえ信じられないことで驚いているのに、お陰で喜ぶタイミングを失ってしまったじゃないですか。 「わ、わーい」 一応喜びを表現しようとしてみたのですが。なんかもうダメっぽいですね。 『なーんだよ凛!もっと全身で喜びを表現しろって!ほーら、バンザー……おふぁ!?』 「!?」 な、なんですか、今の奇声は? 『うるさい!騒ぎすぎ!凛ちゃんがびっくりしてるでしょー!?』 えーと、この声はたしか、舞、さん?こちらからでは姿が見えないので、あまり外で盛り上がってもらっても困るんですが。 『だからって殴るこたぁねーだろ!?』 『うるさい!うるさいからうるさいって言ったの!』 『なんだと!?お前のがよっぽどうるせぇよ!!』 ああ、なんだか子供みたいなケンカが始まってしまいました。こんな時私はどうしたらいいんでしょう。戦闘中は夢中だったので特に気にしませんでしたが、素の応対にはまだ戸惑いがあるんですから。 「あ、あの、お二人共とにかく落ち着いて……」 『うるさいって言った方がうるさいんだよ!』 『なによそれ!バカなんじゃないの!?』 『バカ!?バカって言ったか、このバカは!?』 『誰がバカよ!?』 ああ、ダメそうです。聞いてません。完全無視です。もう、泣いてもいいですか?私。 「……信じらんない」 喧騒の中、天を仰いでいた彼女が、アルさんが小さく呟きました。 「このアタシが……負けた?アンタみたいな初心者に?」 「……」 信じられない、のは私も同様です。勝利の実感等、未だに沸いて来ないのですから。 「おかしいでしょ?せいぜい笑えばいいわよ」 「いえ、そんな事ありません。私なんかが勝てたのは隼人の、マスターのお陰なんですから」 「あんたのマスター?ソイツだって初バトルだったんでしょ?それとも、それだけアタシが情けないって言いたいワケ?」 「違います!ただ私は……隼人を信じる事が出来たから。隼人が、信じてくれたから」 「……?」 私自身、事態を受け入れきることは出来ていません。ですが、私なりに精一杯、彼女に応えなければなりません。私とのバトルに、全力で挑んでくれた彼女に。 「隼人が言ってくれたんです。俺も信じる、だからお前も信じろって。私は、それに応えたかったんです」 「……ハッ、なによそれ?信じるだの信じろだの……マスターとの信頼ってワケ?会ったばっかのマスターがそんなに好きなワケ?」 自然と顔が綻ぶのが自分でもわかりました。その質問だけは迷わずに、そして心から答える事が出来ます。 「はい!大好きですよ。だから私はがんばれたんです」 「……………よく恥ずかし気もなくそんなコト言えるわね。はぁ、なんかもう、どーでもいいわ」 あれ?もしかして呆れられてますか?彼女、アルさんは溜め息まじりに起き上がると、背中を向けたまま言葉を続けました。 「アンタ、バトルは続けるんでしょーね?」 「もちろんです!もっと強くなって、いろんな方と戦ってみたいんです!」 「……ふん、せいぜいがんばりなさいよ。…………また、ね」 それだけ言い残すと、彼女はさっさとフィールドから離脱してしまいました。『また』、一人の神姫として、そしていずれ戦う相手として、認めてもらえたという事でしょうか。 「はい。ありがとう、ございました!」 私は見えなくなった彼女の背中に一礼。心からの感謝を贈りました。 さて、神姫での決着は着いた。これで解決すべき問題は、あと一つ。 「おい、なんか言う事は?」 俺は半ば放心状態の残った『問題』に声を掛けた。このバトルに至ったそもそもの原因、彼にもそろそろご退場願おう。 「な、なんだよ!どうせこんなのマグレだ!」 「昔の人は言いました。『勝てば官軍』。さ~あ、なんか言うことは?」 「お……覚えてろよ!そのうち絶対リベンジしてやるからな!」 散々使い古された捨て台詞を残すと、騒ぎの元凶は慌てて走り去って行った。結局最後までオヤクソクを大事にするヤツだったな。名前すらわからないままだったのは気の毒だが。 「隼人。そ、その……ありが――」 「ったく、いつまでたっても手間がかかるヤツだな、お前は」 「な、なによ!人がせっかくお礼言ってんのに!」 わざわざ礼を言う必要なんてないのに、そんな改まった態度をとられると調子が狂ってしまう。だから俺はあくまでいつも通りに対応した。舞もいつも通りの憎まれ口を叩けるように。 「あの……」 「へーんだ、お前なんかに感謝されなくたっていいよー」 「なっ、調子にのるな!このバカ隼人!」 「んだと!?この泣き虫舞!」 「……あのー」 「誰が泣き虫よ!?私は泣いてなんかないわよ!」 「ウソつけ。さっきだってめそめそ泣いてたクセに」 「…………くすん」 「「あ」」 不意に聞こえた声に、俺達はようやく我に返る。はぐらかすだけのつもりが、つい白熱し過ぎてしまったようだ。舞と同時に視線を落とすと、そこにはいつの間にか凛が立ち尽くしていた。なかなか気付いてやらなかったせいか、凛は目尻に涙を溜めてすねているようだった。 「よ、よお、凛。お疲れ」 「えと、お、おかえり、凛ちゃん」 慌てて取り繕うが、どうしようもない程白々しい。凛はうるんだままの目で俺達を見上げると、哀しそうに抗議の声をあげる。 「二人とも、今私のこと忘れてませんでしたか?」 「「ま、まさか!」」 「…………ぐすっ」 「じょ、冗談だよ冗談!凛。よくやったな」 今にも泣き出しそうな凛。あやすようにその頭を指先で撫でてやると、恥ずかしいのか少し頬を赤らめながら目を細めた。 「ごめんね、私のせいで無茶させちゃって。ありがとう、凛ちゃん」 「いえ、そんなこ――」 「り、ん、ちゃーーーん!!」 「うわぁ!?」 舞の謝罪に応えようと口を開いた凛に、突然情熱的なタックルが浴びせられた。勢い余ってそのまま数回転した凛は、ようやく自分に抱きついたままの彼女に気が付く。 「あ、あなたは?」 「あたしヒカリ!舞の神姫だよ。それより凛ちゃん強いね!かっこよかったよー!」 「あ、ありがとうございます」 「ね、友達になろ!一緒に遊ぼーよ!あ!あたしともバトルしよ!」 凛のバトルを見て興奮しているのか、ヒカリは凛の肩を揺すりながら一方的に喋り続けている。勢いに呑まれた凛はしどろもどろに言葉を発しているが、完全にされるがままだった。 「こーら、ヒカリ。ちょっと落ち着きなさい」 「よかったな凛。早速友達出来て」 「はい!……あの、ヒカリ、さん?とりあえず離してくれませんか?」 「ヒカリさんじゃないの!ヒカリ!友達なんだからヒカリでいいのー!」 「だ、だからヒカリ!はーなーしーてー!」 すっかり気に入られたらしい。凛もまんざらでもないようで、これならお互いいい友達になれそうだ。二人を見つめていた舞も、俺の顔を覗きこむと嬉しそうに微笑んだ。 「よっぽど嬉しいのね。隼人が神姫買うって言ってから、ずーっと楽しみにしてたもん。近くに持ってる人もいなかったしね」 「ま、凛もなんだかんだで嬉しそうだし、よかったよかった」 「はーやーとー!助けてくださーい!」 「あはは、こんやはかえさないよー!」 やれやれ、なんだか賑やかになったものだ。こんな調子じゃあ、明日からも大変そうだ。 これからどんなオーナーと出会い、どんな神姫と戦うのか。きっと色んなヤツがいるのだろう。その全てが、俺は楽しみで仕方なかった。まだ目指す場所もわからないが、これから起こる全てを乗り越えて行こう。小さな相棒、武装神姫と。 「凛!これからよろしくな!」 「はい、隼人!こちらこそ!」 『武装神姫-PRINCESS BRAVE-』
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バトルも終わり、記四季は彩女と共に席を立った。 「しかしあの狙撃手、恐ろしいほどの腕前でしたね」 「だぁな。俺もまさか、動けなくなるほどに正確とは思ってなかった」 来たときと同じように、着物の肩に彩女を乗せその場を去ろうとする記四季。しかし記四季のその行動は、女の声で遮られた。 「・・・・おじいちゃん?」 記四季が振り返った先にいたのは、サラを肩に乗せた春奈だった。 「・・・おぉぅ。春奈じゃねぇか。元気してたか」 突然の孫娘の登場で、記四季はばつが悪そうに頭をかく。 無理も無い。武装神姫はかなり市民権を得、一般にも普及し始めてはいるがまだかなりコアな部類に入る趣味だ。彼の周りには女性ユーザーが多いが、やはり男性ユーザーの方が圧倒的に数は多い。 見つかった相手が孫娘、ましてや記四季は老人である。何だかいわれの無い誤解を受けそうな空気だ。 「・・・・あー・・・つまりだな・・・・こいつはよ・・・ほら、アレだ・・・」 ボケ予防に買ったとか嘘をつくか? だが本当は妻が死んだとき、春奈の姉の都が寂しかろうといきなり送りつけてきたと言うのも別にいいかもしれない。 ・・・いや、そもそも自分は何故こんなにも混乱しているのか? 別にやましい理由が無いならば、真実を話しても構わないのではないか? しかしそれを言うのは都に悪い気がするし、なにより自分のプライドがそれを許さない。 ・・・どうしたものか、と記四季の脳が全力で回転していると 「お初にお目にかかります。記四季の神姫をしております。彩女と申します。春奈お嬢様のお噂はかねがね」 空気読んでない犬が、深々と座礼をしやがったのだ。 ホワイトファング・ハウリングソウル 第三話 『爺の心労』 「・・・つまり彩女ちゃんは、お姉ちゃんからのプレゼントって訳なんだ」 「・・・・応」 彩女が春奈に挨拶した後、なし崩し的にティールームに連れ込まれ(彩女の発案)店内で一番奥の席に座り(記四季、最後の抵抗)麦茶を注文したところで記四季は春奈に彩女の事を話していた。 「となると・・・まさかビルを袈裟切りしたのは・・・」 「はい、私で御座います」 神姫は神姫で話が盛り上がっているようだ。ようなのだが人間側が全く盛り上がってない。 別に春奈は普通にしている・・・というか記四季が“自分が神姫を持っている”事を気にしすぎて、春奈はどうすればいいのか対応に困っている。 彼の考え方は妙に古いところがあり、恐らくは女子どもが持つべき人形を男の、しかも老人の自分が持っていることを孫娘に知られたのがショックなのだろう。 ボケ予防に神姫を買う老人もいることだし・・・別に気にすることは無いと思うのだが。 「・・・そ、そうだ。彩女ちゃんってハウリンタイプだよね。なのになんで髪が白いの? 耳も生えてるし」 「・・・・・・なんでも、都が知り合いのカスタムメイカーから貰ってきたらしい」 「ふ、普段から甲冑着てるの?」 「・・・・家に送られてきたときは十二単を着ていた」 「お、おじいちゃんは、最近どう? 私はテストで赤点ぎりぎりだったよ」 「・・・・昨日イノシシ鍋食べた。・・・・・解体に手間取ったよ」 「・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・」 会話が続かない。 春奈は今、非常に困っていた。 その様子を少し楽しそうにテーブルから見ているサラは本物のサドだろう。八谷以外でこんなに困っている春奈を見るのは初めてだ。 彩女はというと暢気に茶をすすっている。あんな山奥で暮らしていると人付き合いが無いため、春奈には悪いがちょうどいい機会であると助け船を出さないつもりだ。 「・・・あ、あのさ・・・えぇと・・・そ、そういえばお姉ちゃんも神姫を持ってるんだよ。悪魔型と犬型の姉妹でね・・・」 「クロとハチ公か。知ってるよ」 「う、うん、それでこの間その二人がね・・・」 「・・・アヤメ、キシキはハルナが苦手なのですか?」 「違います。多分、お嬢様に私の存在がばれたのが問題なのでしょう。ほら、私達はマニアックな存在ではないですか。多分引かれるとでも思っているのでしょう」 「なるほど、まぁその心配は無用ですが。・・・しかし大した狼狽ぶりですね。ハルナもさることながら、キシキも無言で狼狽すると言う芸を披露するとは。いやはや七瀬一族、中々に奥が深い」 「・・・まぁ主も山に引き篭もってばかりではいけませんからね。たまにはこうして街に下りるようにしているのです」 「山に引き篭もる・・・随分アウトドアなヒッキーですね」 「事実その様なものです。あの竹が生い茂り、緑しかない景色の中では、あまり外にいると言う感覚がしません」 「ほほぅ、竹林ですか。少し見てみたいですね」 「それでしたら春奈お嬢様と是非お越しください。文字通り何も無い場所ですが、持てる限りの持て成しをさせて頂きますので」 「それはありがたい。ではそのうちにお邪魔させていただきます」 神姫は神姫で暢気なものである。 「それじゃ、またね。おじいちゃん」 「・・・・・・・・・・応。お前も元気してろな」 ティールームで一時間ほど話した後、春奈と別れ記四季は帰路についた。 行きは手に持っていた杖を、今は突いている。・・・背筋は真っ直ぐではあるが。 「今日はお疲れ様で御座いました」 「・・・全くだ」 彩女が微笑みながら言うと記四季は溜息をつきながら答える。 自分がいなければ主はここまで疲れなかっただろうと、彩女は思ったが気にしないことにした。 何分刺激の少ない山暮らしだ。たまにはこういうのも悪くは無いだろう。 「こんなことならムラサキんとこ行っとけばよかった・・・そうすりゃ心構えも出来たってのによ・・・」 「主、彼女は『アメティスタ』です。・・・確かに彼女の“能力”には目を見張るものがありますが。それにばかり頼っていてはいけませんぞ?」 記四季と彩女が暮らす山の入り口にある北白蛇神社。そこにいる『アメティスタ』は予言ができると言う。確かに彼女は他の神姫とは違い、どこか神秘的な美しさを備えていはいるが・・・彩女にとってはただの友人だ。 ちなみに、アメティスタが予言が出来ることは秘密にされている。彼女のマスターが騒ぎを嫌う性格だからだ。そのためアメティスタは自身の姿を見せないように、パソコンで予言したことを書いて印刷している。その精度はなかなかで好評なのだが、予言できる内容が日常に関すること(どこぞのスーパーがセールをするとか。明日は雨が降るとか)ばかりなので地域密着型の預言者とも言えるかもしれない。 「ならば明日こそはアメティスタに会いに行きましょう。ここ最近彼女と話していませんしね」 「・・・俺ぁむしろ神主の方に用事があるんだがな。まぁいいさ、明日行こう。今日はもう帰るぞ。このままじゃ帰る頃には真っ暗だ」 「御意。最近不逞の輩が増えたそうですし、騒動は避けたいですな」 「タバコ屋のタミさんとこだったか? この間空き巣が入ったのは」 「ですね。まぁいつも居眠りしていらしたようですし。空き巣も何も取らずに帰ったそうですが」 二人は話しながら、逢魔ヶ時の街を歩いていった。 ・・・・二人が家に着いたのは日が落ちてからの事である。 前・・・次
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彼女は強い。 それは承知していたはずだった。 しかし、思わず愚痴が出る。 「なにも、こうも簡単に…、嫌な娘なンだからッ」 彼女は公式バトルの経験はほとんどない。 事実、バトル用の筐体に入った彼女のパラメーターは新参のそれだった。 LP lv.0 SP lv.0 攻撃 lv.1 命中 lv.1 回避 lv.1 防御 lv.0 総合lv.3 今しがた受けた忍者刀での攻撃も、ダメージは軽微。LPも合計200弱ほど持っていかれただけ。ただ、その攻撃の内容が問題だった。 まず、彼女の気配を察知することができなかった。そして攻撃。交錯する瞬間に放たれたその一振りは、確実に自分の左手首に当たっていた。これまでに受けた攻撃は合計三回。最初は足だった。右足、そして左足の順で攻撃を受けた。もちろん、神姫バトルでは攻撃が有効か否かだけで、攻撃部位によって、被ダメージが変わるということはない。どこで受けても一定の計算式に則った値が自分に与えられたLP値から引かれるだけだ。 しかし、その、相手の四肢から攻めて動きを止める、という明確な意志が籠った攻撃は、屈辱でもあったが同時に驚きでもあり喜びでもあった。今まで神姫バトルで部位を考えて攻撃するなどということは、自分が知るどの神姫もー、必然が無かったからではあるが、採ったことが無い行動だったからだ。攻撃を受けたことは屈辱だが、これまでにない新しい経験をできたことに喜びを感じていた。 「流石イリーガルの相手をしている、ってことよね」 しかし、自分の攻撃も当たらない。本来なら、パラメーター上では決してはずすことのない回避レベルである。それでも彼女は遮蔽物を巧みに使い、パラメーターの低さを補っている。補う? 訂正。恐らく彼女は己の回避レベルを意識していない。 本当に戦っているなら、もう勝敗はついている。 しかし、これは公式ルールに則った神姫バトルだ。改めて、自分のステータスを確認する。次の接敵でスキルを発動させられる。 ひょい、と目の前に彼女が現れた。忍者刀の間合いにはまだ少し遠い。 「これで終わりにするよッ!」 クライモアを振り上げた。 春。東京、某大学。サークル棟。「神姫同好会」サークル室。 その少女、山崎恵子は目の前で繰り広げられたバトルに思わず声をあげた。 新入生の勧誘を兼ねて行われたエキシビジョンマッチである。 「すごいよ、巴」 テーブルで一緒に観戦していた自分の神姫に声を掛ける。 「はい、マスター。勝者の方も凄いですが、Cランクであそこまで戦ったあの忍者型は本当に凄いと思い………ます」 巴と呼ばれたその種型の神姫は己の主人の声に応える。 周囲では、山崎と同様に勧誘を受けた新入生たちが、ある者は興奮しながら、またある者はささやくように己の神姫と今のバトルについて意見を交わしていた。その内容は山崎恵子たち同様、短時間でspを溜め込みドラゴンクラッシャーを放った、勝者の花形神姫に対するものだった。 勝者の花型、名をゲンドゥルという、がマスターである間中優の手のひらの上で観客の新入生らに手を振って呼びかけをした。アーマー類は花型の標準武装のそれである。ボディ・アーマー部には青のグラデーションで、音楽のフォルテを模したと思われる記号が配されていた。 ゲンドゥルは打ち合わせていた通りに勧誘の台詞を話し始めた。 「皆さん、見てお解りいただけたように、この同好会は上位ランカーでなければ入れない、というわけではありません。いろんな方々に入って頂きたいんです。今でこそ神姫バトルがメインになっていますが、武装神姫である必要はありません! 互換があるMMS素体のマスターであればオッケー。神姫の服飾デザインに興味のある方や小物作りが好きな方なんかも大歓迎! あたし自身もバトル以外でも素敵な衣装が欲しいしね。気づいていると思うけど、室内の棚に飾っているのは同好会のメンバーが作った………」 「あ、すいません。じゃぁ、ウチの子なんかもいいんですか」 質問を投げかけた新入生の肩には、ホットパンツにビキニを纏ったMMSがちょこんと腰をかけていた。 「もちろん! 最近発表されたSOLの皆さんもオッケー。ローカルルールを作って異種バトルなんかも考えてます」 ゲンドゥルの声に新入生たちからどよめきが上がった。 山崎恵子は、ふと、自分の神姫があらぬ方向を見て動きを止めていることに気づいた。 「巴?」 一拍の間を置いて、神姫が彼女に応えた。 「マスター、わたし、あの人たちに会ったことがあるような気がします」 と、先ほどまでゲンドゥルと対戦していた忍者型とそのマスターを指した。 マスターの男性は、標準体型で身長は170センチを越えるくらい。髪を短く切りそろえ茶色いコーデュロイのジャケットを羽織っていた。山崎はその姿を見た瞬間、自分と同じものを感じ取った。理由はさほどない。ただ、自分と一緒だ、と感じただけだ。 「シラヌイ」 彼は自分の神姫をそう呼んでいた。 フィンランド、ヘルシンキ空港。出発ロビー。 若い女性の声。日本語。 「そういえば、シラヌイさんたち、今頃同好会の新入生の勧誘をしてるはずですね」 その声に、ベンチに座った男が応える。名を相原竜之介、という。 「おや、椿もそういうことをしてみたいのかい」 隣の席に置かれた鞄の上に立つ侍型の神姫に向かって声を掛けた。サンダル履きに作務衣の上下を着た相原の姿とは対照的に、その椿と呼ばれた神姫はフォーマルな桜色のスーツを身に纏っていた。 「いえ、彼も当初と比較して、人付き合いが上手くなったと思います。これもマスターの働きかけあってのことです。以前なら、そのようなことに参加するなんて思えませんでしたが」 「買いかぶり過ぎ…、だよっと」 相原は手にしたPDAをタップしてメーラーをチェックする。 「何か新しい情報がありましたか、マスター」 相原は奇妙な笑いを浮かべた。困ったような、嬉しそうな、人を小馬鹿にしたような表情にも見える。それは、この男が時折見せる特有の表情である。 「どうやら、ね。例のノード群の情報の流れを掴むことができたようだよ」 東京、西東京市。とあるアパート。 「うーん、何か調子ヘンなのよ、最近」 作業デスクの上から、悪魔型神姫がマスターの男性、天野敬三に訴えている。 「ユリ、君はどうだい」 天野は悪魔型の傍らに立つ天使型に尋ねた。 「ケイと一緒よ」 「って、何がヘンなんだ。もうちょっと具体的に」 そう言うと、二体の神姫は互いに顔を見合わせた。どこまで言っていいのかな、とでも言う風に。 「ネット上にアタシたち神姫が情報交換する掲示板があることは知ってるわよね」 悪魔型ー、ケイが切り出した。 「ああ、うわさは聞いたことがある。でも誰も見つけられないでいる。それがどうしたんだ」 「どこかのサーバーにあるわけじゃないからなの」 天使型の、ユリが続ける。 「私たち神姫同士がピアとして、直接データをやり取りしてるの」 天野は一瞬ポカンとして、次にパンと手を打った。 「思い出したぞ。大学の情報処理の講義で出てきた。確か今世紀初頭のP2Pソフトのwinny2で実装されていた掲示板機能だな。………そうか、それなら確かにネット上でその存在を探知することはほとんど困難になるはずだ! いや、上手い手を考えたなぁ」 興奮してひとりで話し始めた。 「おーい、馬鹿オーナーっ」 ケイが、デスクの上で跳ねる。悪魔型特有の長いツインテールがぴょこぴょこと揺れる。 「あ、いや。済まん。ーで?」 「えーっと、ですねぇ。わたしたちたが『おかしい』と言っているのは、本来、クレイドルでバックアップ、デフラグとアップデートをしているだけのスリープ状態のはずなのに、P2Pをしたときのような感じが残っているってことなんです」 話の腰を折られながらもとりあえず説明をするユリ。 一瞬、考えを巡らせた天野が口を開いた。 「むむむ………さて、それじゃー、とりあえず、次の休みにでも神姫センターにでも行ってみようか。ちょっと俺じゃ手に負えないしね。それまではスリープのときにはネットとの接続を切っておこう」
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「『ALChemist』…よし、ここだ」 ぽちとたまが充電のために寝た後、PCの画面を見てひとり呟く。 何をしているかというと、先日のぽちの勝利の祝いとして何か買ってやるために何がいいかネットをさまよっていたのだ。 そして見つけたのがこの『Electro Lolita』というブランド。可愛らしいデザインで俺が着せたい…もとい、2人も喜ぶだろうと思いこれに決めた。 もちろんたまにも買ってやるぞ?なんたって俺が着せたい…ゲフ、ゲフン、たまの存在だって勝利に影響を与えてるんだからな。 「それで、場所は…お、アキバか。そういや最近行ってなかったな」 独り言が増えたかな?まぁいいや。明後日は日曜だし、間宮でも誘って行ってこよう。 と、いうわけで当日。 「んじゃ、野暮用で間宮と出かけてくるから、よろしくな」 「んー、避妊はちゃんとしないとダメだよー!」 「たッたま!バカなこと言わないのっ!!…あの、気を付けて…」 「否認?よくわからんけどまぁ、行ってくるわ」 それから地元の駅で待ち合わせしていた間宮とアイカと共に、30分ほど電車に揺られて昼前にやっと我らが聖地秋葉原に着いた。40年くらい前には2時間くらいかかったらしいな、科学の進歩は素晴らしい。 「うおー、久々だなぁ、ここ」 「うん、私も久しぶりに来たよ~」 前に来たときから変わってないな。正面には大人の…いや、それはいいや。 「んじゃま、もうすぐ昼だし飯でも食うか」 「そうだね~。じゃあ…あそこのお店入ろ~」 そう言いながら間宮が指差しているのは俗に言うメイド喫茶ってヤツだ。 「ん、あれは…まぁいいか」 今日付き合ってもらってるわけだし行きたいところに行ってやろう。ぶっちゃけおもしろそうだ。 「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様方!」 店に入るとメイドさんが出迎えてくれた。お嬢様方ってのはアイカも入ってるんだろう。 「ふぇ…お嬢様って…私…ですか…?」 「はい、お嬢様、こちらのお席にどうぞ!」 アイカがびくびくしながら尋ねるとメイドさんは窓際の席に俺達を案内してくれた。 こういうとこは高いんだろうな…とか思いつつメニューを見る。ん、これ… 「あれ~、『武装神姫用メイドグッズゲットキャンペーン』だって~。なんだろね~」 俺が言う前に間宮がそれを読み上げた。するとテーブル脇に待機していたメイドさんが、 「えぇ、1000円以上ご注文のご主人様にヘッドドレスやエプロン等のグッズを差し上げています。メーカー公認なんでバトルにも使えますよ」 と、説明してくれた。 なら、もらうしかないじゃないかっ!! 「行ってらっしゃいませ、ご主人様、お嬢様方!」 店から出た俺と間宮の手にはしっかりとフリフリの付いたエプロンが握られていた。 「ぁの…桃ちゃん、私…着るの……?」 「うん~、可愛いと思うよ~」 そう間宮が言うとアイカは少し考えるような顔をしてから真っ赤になり、バッグの中に潜ってしまった。 まったく、かわいいやつだぜ(*^ ^*) 「よし、じゃあ目的地に向かいますかっ」 俺達が目的地としているMMSショップ『ALChemist』はここからは少し歩いたところにある無線会館の地下2階にあるらしい。 「そういえば間宮は行ったことあるのか?」 「うぅん、ないよ~、初めて~。なんだか『槇野 晶』っていう女の人が店長さんなんだって~」 「あぁ、そうらしいな。確かその人が服のデザインとかまでやってんだろ?すげぇよな」 「うん~私も前にアイカに作ってあげたけど、きれいにできなかったよ~。――あ、あそこだ~」 話ながら歩いているうちに無線会館に着いた。ここの地下だな、うん、わくわく。 「いらっしゃいませですの!えと、初めての方ですよね、ゆっくり見て行ってくださいですの♪」 到着した俺達を迎えてくれたのは綺麗な蒼い目の可愛い女の子だった。 「悠くん、あの店員さんかわいーね。外人さんかな~?」 さっそく商品を見始めた俺に間宮が小声で話し掛けてくる。 「じゃないかな?てかパーツとかも色々あるんだな。来てよかったよ」 さすがは有名なMMSショップなだけあって、品揃えは確かだ。それで、『Electro Lolita』は…と。 「お、これか」 色々なデザインの服飾品が並んでいる。それはネットなんかの画像で見るのより繊細で、見入ってしまった。 しかし…どういうのがいいんだろうか。可愛いのもいいが、2人が喜ぶようなのがいいし。 全部買う ひたすら悩む →店員さんに聞く よし、ここはあの店員さんに聞いてみようかな。 「すいません、妹…うちの神姫に欲しいんですが…どんなのがいいんでしょ?」 「はいですの、神姫の好みとかはわかりますか?」 すぐに笑顔で対応してくれる店員さん。いい人っぽいな。 「うーん、好みか…2人なんだけど、片方は機能性とかあると喜ぶかな。もう片方は動きやすいのがいいと思いますね」 店員さんは少し考えて、数着の服を選んでくれた。 「これなんかが条件に合うと思いますの。でも、神姫はマスターが自分のために選んでくれたものが一番うれしいんですの♪」 ふむ、確かにそうかも…って自惚れかな?そんなことを考えながら店員さんが選んでくれた服を見ていると。 「葵、そろそろ私が代わろう―――っと、接客中か」 奥の方から声が聞こえた。 「ようこそ、気に入ったものはあったか?」 声の主はこちらに近づいてきたらしい。誰が来たんだ?そう思って顔をあげると… 「いいのが多くて悩んじゃいま……ょぅι゛ょ?グハッ!!」 そこにいた幼…女性に蹴りをいただいた。 「誰がょぅι゛ょかッ!私は槇野晶だ!客とて容赦はせんぞ、次はないからなッ!」 「すみません…ってあなたが店長さん?」 どう見ても子供なのに、ということばを飲み込んだ。 「いかにも、そうだが?見た目で人の中身まで判断するのはよくないぞ」 またすみません、と謝って商品の吟味に戻る。お、これなんかぽちにいいな。 「それにしますの?」 葵と呼ばれた店員さんが聞いてくる。 「ふむ、それか。それは動き易さを重視したタイプだがデザインもよかろう?…それとなると、落ち着いた性格の…ハウリンか」 選んだ服だけでぽちのことを言い当てた槇野店長。この後、たまの服を選んだ時にも性格やタイプを言い当ててみせた。 この人から神姫への愛、というかそんな感じのものをとても感じられる。本当に神姫が好きなんだろうな。 「ありがとうございました、またどうぞですの♪」 「うん、是非また来させてもらいます」 しっかり選んだ服を持って店を後にする。 「すごかったね~いいの買えた~?」 確かにすごかった。是非また来たいな、よければ店長さんとももっと話したいし。 「あぁ、また行こうな。今度は2人も連れてきてやろう」 そうそう。早く帰ってプレゼントしてやるんだ、喜ぶ顔が目に浮かぶ! つづくぅう
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鋼の心 ~Eisen Herz~ 第15話:リ・インフォース 「……で、見せたい物って何、祐一?」 「ああ、これなんだけどね……」 島田家に招かれたリーナと(特に理由も無く着いて来た)美空の前に、小さな箱が出された。 「……京子さんとの再戦まであと一週間ちょっと。だからそれまでに、アイゼンの新しい武器を作ろうと思うんだけどさ……」 そう言って祐一は箱を開ける。 「リーナの力を借りたい、手伝って欲しいんだ……」 そう言って祐一はそれを取り出した。 8月7日。 土方京子の予告した15日まであと……、8日。 それは同時に、天海神姫センターで行われる大会の日でもあった。 「ふ~ん、結構よく出来ているわね……」 そう言ってリーナが眺めるのは、神姫サイズのエアバイクだった。 フロート式で車輪の無いそれは、移動速度で劣るアイゼンの為に祐一が設計したもの。 だがしかし。ジェネレータの出力不足で満足な性能を出せず、結局お蔵入りとなった物だった。 「……つまり、これのエンジンを私に作れ、と言いたいのね?」 「ああ。リーナなら、俺には出来ない事でも出来ると思うから……」 単純な技術力の限界。 只の高校生に過ぎない祐一が突破できない壁。 それの打破は、目の前に居る小さな少女にならば可能な事の筈だった。 「でも、これだけじゃどうしようも無いでしょ? あいつらの能力は祐一も見た筈よ?」 「うん。強いよ、あの子たち……」 あの夜に出遭った、土方京子の神姫たち。 花の四姉妹。 「……まあ、武装神姫の初期開発者だって話だし、凄い武器とか作れるんだろうから、強いのは当然でしょ?」 「違うよ、美空」 祐一の否定は断言。 それは、彼女達の強さが性能に由来する物ではないと言う確信から来るものだった。 「あの子達の強さは、どちらかと言えば設計思想に基づく強さだよ」 「そうね……、技術力に差が無いとは言わないけれど。これ程の戦力差が出ているのは、土方京子の設計思想による所が大きいと思うわ……」 「どーゆう事?」 祐一とリーナの双方に否定され、美空が眉をしかめる。 「例えば、カトレア。強力なバリアとレーザーソードを持っている……。だから強い」 「うん」 「でもそれは、武装が強力だからじゃない。“格闘戦に特化した性能を持つ神姫”が、確実に“格闘戦に持ち込める武装”だから強いんだ」 その事実に比すれば、武装単体の性能などオマケのようなもの。 もとより性能に劣るアイゼンにとって、“自分より強い神姫”など珍しくも無い。 強力な武装を持った神姫などいくらでも相手にしてきたし、勝ってきた。 故に、祐一には分かる。 カトレアのように、戦術段階で明確な戦法を駆使する相手こそ、最も戦い難く、最も手強い相手なのだと。 「……ま、それはともかく。現実問題としてこれ(移動力)だけじゃ如何にもならないわ。何か、他に勝つ手を考えないと……」 エアバイクを祐一に返し、リーナが肩をすくめた。 「……元より、これだけで如何にかなるとは思ってないよ。……だから、こういう事を考えてみた」 そう言って、祐一は手にしたソレを分解し始める。 「これなら出力にも余裕が出来るし、拡張性も広がる。……性能次第では戦術の幅はとても広くなると思うよ?」 「……ふ~ん、なるほど……。こういう着眼点はさすがね、祐一……。ふむ……」 腕組みしてしばし。 リーナは机の上のメモ帳にサラサラと幾つかの数式を書き出して行く。 「リーナ?」 「……ん~、ちょっと待ってて」 投げ遣りな返事を返しながらも、メモの上を走るペンの動きは止まらない。 「………………………、出来た」 「?」 首を傾げる祐一に、書き終えたメモを渡すリーナ。 「一週間……。一週間よ。一週間でそこに書いてある以上の性能のジェネレータを造るわ。祐一はそれに見合う性能を出せるようにそれを改造なさい」 「……これって……。必要性能の3倍くらいあるんだけど?」 「それだけ余力があれば、ひとかどの物が作れるでしょう? どうせなら、究極の神姫を作りなさい!!」 リーナの書いたメモが真実ならば、それは確かにその土台となり得るものだった。 「……ああ、分かった。リーナが驚くようなものを作ってやるよ」 「ええ、楽しみにしてるわ……。それじゃ、少し席を外すわね、電話掛けてくる」 そう言ってリーナは席を立つ。 (さて、クリアしなきゃいけない問題が一つあるわね……) そう、今のリーナにとって立ち塞がる壁は、国際電話の料金だった。 (…………ん~? あ、そうか!! 祐一の家の電話を使えばいいんだわ!! そうすれば、(私の払う)電話料金はタダになるじゃない!!) 所詮リーナも紙一重の人だった。 ◆ 「あのさ、祐一?」 「どうしたの、美空?」 モニターに映るアイゼンのデータと睨めっこしながら、祐一が返事を返す。 「……この先の戦い、やっぱり苦戦を強いられると思うのよ」 「……だろうね……」 その見解は祐一にも異論を挟む所はない。 「で、よ?」 「うん?」 「フェータにも、何か新しい装備が欲しいな~って思う訳よ」 「…………そう言えば……、確かアイゼンの装備として昔作ったものがあったような……」 立ち上がり、アイゼン用の装備の中でも失敗作に分類されるジャンクボックスを漁り始める祐一。 もちろん、失敗作(ジャンク)とは言っても“アイゼンにとっては”、である。 基本性能に劣る部分の多いアイゼンには使いこなせずとも、機能自体は市販の品に劣るものではない筈だった。 「……フェータに合いそうなのって言うと、これかな?」 「……羽根? アーンヴァルの物に似てるけど、少し大きいわね?」 「ベースはアーンヴァル。大型化して出力を高めると同時に、可変翼で機動性を向上させたもの。……慣性の打ち消しをバーニアに頼るんで、アイゼンじゃタイミングが取れなかったけど、フェータなら出来ると思うんだ……」 「う~ん、そういうのも良いけど、何かこう防御に使えるものも欲しいな~、と……」 「防御?」 それは、今までのフェータの戦法からすると、些か的外れとも取れる要求だった。 「……なんて言うのかな? この間のエウクランテ。あいつの突撃を見てて思ってのよ」 「……京子さんの……、ストレリチア?」 「そう、それ。すとれちあ?」 「ストレリチア」 「すとれいちあ?」 「ストレリチアだって」 「…す、すとれりちあ?」 「そう、そんな感じで」 「……ん?」 何かが記憶の隅に引っかかった様な気がしたが、美空はすぐに思い出す努力を放棄した。 「……で、ストレリチアがどうしたの?」 「そうそう。アイツを見てて思ったの。……やっぱり突撃最強!! って」 「………………うん、まぁ美空らしくてイインジャナイ?」 「何故カタコトになるの?」 「……で、それと防御力にどんな関係が?」 「う~ん、ほら。フェータって防御力低いから、敵の銃撃とか来たら回避を優先するじゃない?」 「当然と言えば当然だけどね……」 「でもよ、そこで銃撃を無視して突っ込めたらもっと簡単に敵を倒せるじゃない」 「……ああ、なるほど」 美空と知り合ったのはここ数ヶ月の事だ。時間で言えばその付き合いはかなり短い。 だがしかし、美空は己の性格を隠さない、偽らない。 集団の中で生きて行くには不利な性格かも知れないが、個人と付き合う上ではこの上なく理解されやすい性格でもあった。 (こういう所、俺とは真逆だな……) そしてそれが、彼女の魅力なのだとも祐一は思う。 既に祐一は、彼女の思考をそれなりには理解できるようになっていた。 「……つまりだ、攻撃機会を増やす為の装備が欲しい訳だ?」 「そう、そんな感じで!!」 「……おっけ、分かった。何か考えてみる……」 「ホント? やたっ!!」 無邪気に微笑む美空を見て、祐一は苦笑する。 なんと言うのか、その……。 (喜ばせたくなるんだよな……) そういう相手だったりするのだ。 ◆ 「やはり、出ましたか……」 モニターの光が村上の顔を照らし出す。 「……既に幽霊は開放され、審判は再開された。……か。難儀な事ね、全く……」 相対する雅の顔は、室内の闇に融け村上からは窺い知れない。 「……で、村上君の方は如何なの? デルタの調整はもう済んだ?」 「調整と言うか……。当日は大会用の装備で挑みますので、余り戦力的に当てにされても困りますが……。そうですね、支援ぐらいならば請け負いましょう……」 「……大会当日を指定して来たのにも、やっぱり意味が有るのかしら……?」 「神姫の数、がボーダーの一つである可能性は高いです。土方真紀の目的が復讐ならば、その示威を示す為により多くのユーザーをターゲットにすることは想像に難くありません」 雅の吐息が闇に熔ける。 「……セタの仕上がりはまあまあ。祐一と浅葱、それからリーナも心配は要らないでしょう……」 「問題は、美空さんですか?」 「……まぁ、祐一が面倒を見るとは思うんだけど……、ね」 普段面倒を見てくれる弟が、別の女の世話を焼く。 姉としてはかなり複雑な心境だった。 人としてはかなりダメだと思うが……。 ◆ 「……で、結局どうなさったんですか?」 「うん。祐一がフェータの為に、何か新しい装備を作ってくれるってさ♪」 「ゆ、祐一さんの……、装備……」 ほへ~、と融ろけた表情を浮かべるフェータ。 帰り道、笑みを浮かべて乳繰り合う美空とフェータを、リーナは複雑な顔で眺めていた。 (アレの調整だけでも大変な筈なのに……祐一、死んでなきゃ良いんだけど……) 国際電話で本社に連絡を取って、“製品”の実験用模型の手配は済ませた。 リーナ自身が設計した、画期的な機構のエンジンを10分の1にスケールダウンしたテストモデル。 無論、そのまま神姫の装備にはならないだろうが、剛性の高いエンジンフフレームを流用できるだけでも随分高い性能を得られる筈だった。 (……ふふふ。楽しみね……) 島田祐一にある種の才覚があるのは、リーナにもよく理解できた。 リーナや村上。それに土方京子とは違い、彼には別段凄い技術力がある訳でもない。 だが、彼の設計にはリーナたちには無い独特のセンスがあるのだ。 技術力の低さを補って尚余りある設計バランスと、コンセプトを明確に想定した装備の選択。 それだけで、既存品の組み合わせと性能の低いストラーフを最強クラスの一角に押し上げている手腕。 (そこに、“私”の技術力を投入したらどうなるのかしら……?) 技術者である以上、究極を求める以上。 リーナにも“最果て”に到達したいという欲求がある。 そしてそれが。その一端を。 島田祐一が見せてくれるような気がするのだ。 (さて、どうなる事やら……) その時を思い描き、リーナは心を躍らせる。 歳相応の子供のように、期待に胸を高鳴らせる自分をリーナは驚愕と共に受け入れていた。 ◆ 決戦、そして大会の日まであと、……8日。 第16話:史上最大の戦いにつづく 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る アーマードコア4fAが面白すぎるので更新が遅れました。 全ミッションオールS。 ハードミッションもオールS。 カラードマッチも、ORCAマッチも全部クリア。 隠しパーツも取ったし、ナインボールエンブレムも取った。 …ので、もう一度最初からやってたんですわ、これが。 前回は「今回の主人公は、霞スミカの後継者らしいから初期機体はTELUSで、……企業はインテリオルだね~」と言いながら始めたので、今回は独立傭兵で始めたのですよ。 初期機体がアーリヤなので装甲は並以下。機動性と火力も両立できなませんが、ランク20、ヴェロノークの突破に苦戦したものの、何とかカラードマッチの制覇を達成。 これからようやくミッションですわ……。 って、神姫と余り関係ない話を続けるのもアレなので、少し関連性のある話でも。 fA最萌えキャラである(?)カラードランク2。リリウム・ウォルコット嬢。 彼女の声に聞き覚えがあると思ったら、バトロン種子の声の人だった事に気づいた今日この頃。 ALCは今日も汚染された地上でコジマ粒子をばら撒くのです。 単体のゲームにココまで嵌まったのは、エースコンバット5以来ですね……。 以上ALCでした。 -